2017年12月31日

サロマ湖は変われど(6)

 橋を渡って、植林した林の脇を進んでいくと、ついに行き止まりとなった。砂州を縦断することは想定されていない。群生する杉はかつて見た時よりも高く、鬱蒼と光を遮っている。昼なお暗い先にはオホーツク海があるのに、波音すら遮ってしまっている。
 行き止まりの手前に、湧き水が出る箇所があった。ワッカというアイヌ語は、飲める水を意味している。砂州だと塩水しか得られそうにないのに。水飲み場には狐が出てきた。人を恐れる様子はない。動きはすばしっこいから、ビデオで追っかけてるうちに見失った。人工の林もすっかり風景の一部となっている。棲みついた最初の狐は、この砂州をてくてく歩いてきたのだろう。かつての僕のように。
 日はすでに傾いていた。もう戻らなければならない。自転車にまたがったまま、橋の上から、オホーツク海とサロマ湖を仕切る砂州を見下ろした。湖面は光を受けて輝いている。海は凪いで遠方が霞んでいる。三十年前とは変わってしまっても、ここにはまだ野生の大地が残っていた。原生花園には白い花、黄色い花、赤いハマナスの花と実もあった。視界が大きく広がって、とらわれない開放感があった。大学生の頃の自分には戻れなかったが、かつて足を運んだ地に立つ実感はあった。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:31| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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