2017年08月30日

男はつらいよ 寅次郎恋やつれ(第13作)

 寅次郎が結婚したいと思っている絹代は、二人の子供を抱えて無我夢中で働く女性だった。引き合わせに温泉津(ゆのつ)にさくらを連れていった寅次郎だが、出奔したままだった絹代の亭主はすでに戻ってきていた。しょっぱなから失恋というわけである。
 今回の特色は、ヒロインが再出演したという点にある。『男はつらいよ 柴又慕情』で登場した歌子である。気難しい小説家の父の反対を押し切って、陶工の青年と結婚した歌子だったが、すでに夫を亡くして、津和野にある亡夫の家で意地の悪い姑・小姑との生活を余儀なくされていた。
 寅次郎と再会したことで、東京に戻る決心がついた歌子は、柴又のとらやを訪ねてくる。夫を亡くした哀しみと、気難しい父に心が開けない思い、仕事を探す悩みを抱えた歌子を、何とかしてやりたいと思う寅次郎。恋愛という感じではなく、年下の女性をいたわるお兄さんという立場がほほえましい。
 歌子は父と和解し、伊豆大島の職場で保母の見習いとして働くようになる。優しく見守ってきた歌子が自立したことで、寅次郎の役目は終わった。そして、毎度のように夜遅く、そっととらやを出て行く。旅ガラスのついでに温泉津に寄り、夫と幸せそうに暮らす絹代と再会して幕が下りる。

 この作品については賛否両論があるようだ。『男はつらいよ 柴又慕情』の続篇である本篇を制作したのは、前作で表現しきれないものがあったからかという点である。前作を制作した段階では、歌子は陶工と結婚し、幸せな人生を歩み出すところで終わっている。それなのに、人気女優の吉永小百合を再登場させるために、歌子の幸せが奪われる設定がなされたのではないか、という憶測も可能だからだ。
 僕自身の感想としては、たとえそうした意図があったとしても、哀しみに沈む歌子の姿が切々と描かれた点や、前作では未解決だった歌子と父との和解もなされたという点で、少なからず心を動かされたので、続篇としては成功していると思われる。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:05| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: