2017年08月13日

男はつらいよ 寅次郎忘れな草(第11作)

 寅次郎とさくらの父の二十七回忌の法事をやっているところに、寅次郎がひょっこり現れる。御前様が読経している最中に、つまらぬいたずらをして、とらやの人たちを爆笑させ、法事を台無しにしてしまう。ちょっと気になったのは、御前様が「般若心経」を唱えていたことだ。柴又帝釈天の題経寺は日蓮宗の寺院だから、「法華経」以外の経典を唱えることはない。玉に瑕なので、ちょっと残念な気がした。
 喧嘩して飛び出した寅次郎は、網走で売れない歌手リリーと出会う。一見あばずれといった風体の女で、旅をしながらあちこちのキャバレーで、酔っ払いを前にして歌っている。歌うことが好きで、夢を見ながら生きているが、現実にはつらいことが多い。夜汽車の窓に明かりがともっていると、そこには平凡ながらも幸せな生活があるんだとつい涙が出てしまう。フーテンの寅さんの女版みたいなリリーである。たちまち二人は意気投合してしまう。
 酪農家に住み込みで働き、堅気に生きようとした寅次郎だが、熱射病に倒れて柴又に戻る。そこにリリーが現れる。寅次郎の女性遍歴について、とらやの人たちが話していると、リリーは「初恋の相手は寅さんだ」と言い出す。とらやの人たちの温かいもてなしに、リリーは感動するのだが、根はいい女でも寅さんの女版である。つらい出来事があった夜、泥酔してとらやを訪れ大騒ぎ、なだめる寅次郎に「話を聞いてくれない」と啖呵を切って飛び出していく。寅次郎がふだんやってきたことである。
 リリーは歌手をやめて、寿司屋の女房の座に落ち着くが、本当は寅さんの方が好きだったとさくらに洩らす。寅次郎との相性が抜群なリリーは、今後も寅次郎と関わることになる。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:49| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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