ぼくは眠ったのだろうか。それとも、この家に生まれてからの出来事を思い出していたのだろうか。お父さんとお母さんが、まだ何か話してる声が聞こえた。いちばんつらかったのは、お父さんだったのかもしれない。
東の空が白んできたようだ。窓からぼんやりした光が差し込んでくる。遠くで鳥の鳴く声がしたが、村人はまだ起きていないだろう。ぼくは着替えさせられた。すでに火が起こされていて、熱いバター茶が入れられた。お父さんが目をこすりながら出てきた。これが最後の食事? お母さんが震える手で、茶碗をお父さんに渡した。本当はまだ話し足りないことがあるはずなのに、ほとんど無口でバター茶で練ったツァンパを口に入れていた。(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:チベット,ダライラマ,転生活仏