2017年03月30日

琉球村と那覇の街(4)

 前方に唯一、白い光が見える。海上に浮かぶ標識か、それとも、すれ違う船の明かりだろうか。近づいてくるようで、目を凝らすと、依然として彼方にある。僕はそれを、漂流する幽霊船の放つ光に見立てた。
 たちまち、暗闇の中から灰色の船体が現れる。それが幻であると知っていたが、夢うつつの目には、甲板の手すりから丸い船室の窓まで、ありありと見えたのだ。ただし、そこには人影がない……。
 はっとして、甲板の下を見ると、この船が放つぼんやりとした光が、黒い波を立てながら海を切り裂いている。その裂け目が現れるたびに、引き込まれるような誘惑を感じる。船から人が落ちるというのは、こういう時なんだろう。ぶるっと身震いした。
 船室に戻って横になった。疲れているのに眠れない。意味の分からないことで悩んでいる。熱でうなされているときのように。眠ったかと思ったら、大地震が起こった夢を見た。起き上がると、船室の中は寝静まっていた。もう夜中である。僕は誘惑に駆られて、また甲板に出た。風は強く、波の音はすさまじいが、海面には航跡以外ほとんどうねりも見られない。星のきらめきが引き立っていた。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:12| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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