2017年02月26日

ぼくはネコなのだ(17)

 夜が明けた。夏の太陽が照り出して、濡れた体も乾いてしまった。セミがけたたましく鳴いている。あの虫でもつかまえたら、腹の足しになるだろうか。
 寝ぼけた目をこすっていると、兄貴が耳もとでささやいた。えさにどうしたらありつけるかという相談だった。
「おれがあのオヤジを挑発するから、そのすきに皿の一つを運び出すんだよ」
「でも、母ちゃんにじゃまされるに決まってるよ」
「向こうはもう、母親じゃないって宣言してるじゃないか。構いやしないさ」
 玄関からおばさんが、皿を二つ持って出てきて、あたりを見回しながら下に置くと、うちの中に戻っていった。極ネコと母ちゃんがぱくつき始めたとき、兄貴がえさに向かって走っていった。
「何を! 小僧、まだいやがったのか」
 極ネコは怒鳴りつけると、突進した兄貴の首根っこをつかんだ。兄貴も負けじと、腹に蹴りを入れる。そのすきに駆け寄り、皿の一つをくわえて持って行こうとした。
「このドロボーネコ!」
 母ちゃんの叫びに、びっくりして皿を落としてしまった。えさは地べたにまき散らされた。ぼくはこぼれたえさを食べ始めた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:21| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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