2020年10月11日

十六歳の修学旅行(8)

 高松の街は信号がほとんど見当たらない。まあ、四十年前のことだから、今はたくさん設置されているんだろうが。途中の道では石垣が見えた。高松城の遺構の一部で、堀は海とつながっていたから、海中に浮かぶ島のように見えたらしい。「讃州さぬきは高松さまの城が見えます波の上」と謡われていた。
 さて、その日泊まる旅館の前まで来た。名前からして古めかしいので、いやな予感がした。古い木造の建物が見えたが、奥の鉄筋コンクリートの建物に入っていったから、良かったと胸をなで下ろしたのも束の間、新館に泊まるのは先生と女子、他のクラスの男子で、僕たちは古い木造に案内されたのだった。
 部屋は広いものの、襖はガタガタいってなかなか開かない。床は傷んで畳も傾いており、大通りをトラックが通るたびに揺れる。こんな軋んだ部屋は初めてで、まるで化け物屋敷のようだった。それでも、床の間がついているから、昔はいい部屋だったんだろう。他の部屋などは、狭い上に窓もなく、壁ははげ落ちて貧乏長屋のようだった。
 広島のホテルではオートロックの個室だったが、これではロマンチックなことは起きそうにない。夜遊びが過ぎた僕のクラスは、懲罰のためにこんな部屋をあてがわれたのか。(つづく)


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posted by 高野敦志 at 03:27| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「は」と「が」の使い分け(第3版)

 日本人が何気なく使っている「は」と「が」は、外国人の日本語学習者には、なかなか習得することが難しい。同様の区別がある韓国語の話者なら、すぐに理解してもらえるが、中国人や欧米人には、煩雑すぎてなかなか理解してもらえない。読んだり聞いたりする分には問題なくても、いざ表現する段になると、上級レベルの学生でも間違えてしまうことが多い。
 古代の日本語では主題の「は」は、用いられていたが、主格の「が」の位置には何も現れなかった。「我が国」の例に見られるように、現代語では所有の「の」に相当する表現として、「が」は用いられていたのである。

 色は匂へど散りぬるを(現象である花は咲いても散ってしまうのに)「いろは歌」

 むかし、男ありけり。(昔、男がいた。)「伊勢物語」

 外国人は初級で「は」と「が」を習うのだが、基本的な用法を習得しないまま、さまざまな用例にぶつかって、混乱してしまうことが多い。とりあえず辞書を見れば、文法的な説明は書いてあるのだが、細かく分類してあるので、途方に暮れてしまいがちである。外国人に微妙な使い分けを教える場合は、要点をとらえて、これだけ知っていれば、九割方は正しく使いこなせるようにするのが、実用的な教え方である。
 留学生に「は」と「が」の使い分けを、分かりやすく説明してほしいと頼まれたので、試みに資料を作ってみた。外国人の中級・上級レベルの学生に教える場合や、日本語学習者で使い分けの区別を確認したい場合は、以下のリンクでpdfの文書を開いてみてほしい。
watoga.pdf

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