2020年08月31日

ひっそりとした柏島(2)

 大堂サンセットというユースホステルに着いた。大堂とは岬一帯の地名で、日没が美しいのでつけられた名前なのだろう。若者との交流を楽しみにしていたが、民宿を兼ねたユースホステルには人影がない。
「今日泊まるのはあんただけだよ」
 力が抜けてしまった。明日の夜も他の宿泊客はいないらしいので、連泊するのはやめて、朝食後に出発することにした。
「どこで泳ぐんですか」とペアレントのおじさんに聞いたら「あそこ、橋の下だよ。砂浜になってるところ」と指さした。
 ちょっとがっかりしたが、明日発つとなると、泳いでいる時間がない。そこで、もう午後五時を回っていたが、海水パンツをはき、その上に服を重ね着して、水中眼鏡とシュノーケルを持って、海峡の砂浜に下りていった。(つづく)


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2020年08月30日

ひっそりとした柏島(1)

 宿毛方面に向かうバスに乗っていた。車窓からは建設中のくろしお鉄道の高架橋が見える。宿毛では下りずに、二時間ほどは揺られていた。バスは足摺半島の向かい側に進んでいた。
 二ツ石を過ぎる辺りから、道幅は一方通行のように狭まり、くねくねと曲がっているので、目が回りそうになった。野猿公園を過ぎると、実際に野猿が三、四匹路上に出ていた。猿は餌をくれる人間を弱者と見なし、歯をむき出して威嚇する習性がある。貢ぎ物でも持ってきたと思うのだろう。
 柏島の手前、新大橋でバスを降り、古い方の橋を渡っていった。随分ひなびた所に来てしまった気がした。海水浴やダイビングの若者が集うと、ユースホステルの案内には書いてあったが。(つづく)


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2020年08月29日

四万十川の清流は(4)

 サイクリングを始めた地点に戻ってきた。遊覧船の見える堤の上に立っている。やっと戻れたんだという安堵感に満たされた。本当は土手に座って、今の思いを日記にしたためたいところだが。
 四万十川橋、通称赤鉄橋の下流に、造りかけの橋と橋脚が見える。宿毛まで延長されるくろしお鉄道の鉄橋だろう。当時はまだ中村駅が終点だったから、これから宿毛の先までバスで移動することになる。駅前の食堂で冷やし素麺を食べた。暑い中を走った後なので、喉が冷たくて気持ちよかった。
 足摺岬はここから真南の方向にある。自殺の名所で、田宮虎彦が『足摺岬』という短編を書いた。自殺するために岬に向かった大学生が、遍路の老人や商人に助けられて、死を思いとどまるという話。作者自身は晩年脳梗塞を患い、投身自殺してしまったが。
 成人したばかりの頃は、精神的に不安定で、僕も自殺を考えたことがある。その日の朝、長い夢を見ていた。自殺しようとしている青年を、僕は必死に思いとどまらせようとしていた。心の中にいるもう一人の自分に救われたのだった。


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