2020年07月24日

鳴門の渦潮に近づくと(5)

 人々はなぜ渦潮に惹(ひ)かれるのか。これほどの奇観を目にすることができるのは、鳴門をおいてないからだが。沖は凪いでいても、ここだけは時化(しけ)のように、船を揺さぶる力を全身に受けて、吸い込まれるように渦を眺めている。
 怖い物見たさということもある。あの渦のような巨大な力に翻弄されたいからか。逆巻く力は海の底深くまで続いている。めくるめく眩暈(げんうん)のうちに、自己の奥に潜む宇宙を感じたいのだ。ブラックホールに吸い込まれる畏怖に似ている。事象の地平線を越えたら、二度と光を見ることがないのに。
 船はまさに巨大な渦の盛り上がった縁にあった。奈落の底を一瞬覗いた気がした。次の瞬間、船は猛スピードで渦を離れた。ぎりぎりの境界まで迫ったところで、大鳴門橋の下をくぐり、数分で元の桟橋に戻っていった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:16| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする