その先、弘法浜は砂浜で、海水浴を楽しんでいる人が大勢いる。眺めているうちに、我慢できなくなった。トイレで着替えると、体操をして波の中に身をゆだねた。海水は温かく澄んでいる。数メートルも進むと、もう背丈が届かないが、底がよく見えるので怖くない。
これほど美しい海に慣れてしまえば、もう湘南辺りの海には入れない。海に入るのは十年ぶりぐらいだった。懐かしく気持ちも自然となごんでいく。波の満ち干に揺られながら、内にあった緊張がすべて解きほぐされていく。これは快楽そのものだ。無邪気に恋人とビーチボールで遊んでいる男女を見ても、嫉妬の気持ちは起こらない。相手の気持ちと同化することができるからだ。(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:伊豆大島,利島,弘法浜,海水浴