2020年03月17日

神風邪

 アジア大陸の東の端に、独裁をめざす首相が支配する島国があった。外交と称する豪遊と連夜の酒宴に興じるのが政治だった。マスコミが国家の私物化だとして、首相を糾弾しはじめたとき、未知のウイルスが流行して、国民の政治への関心は薄れた。与党はこのウイルスを「神風邪」と呼んだ。それを聞いた人々は、「神とは疫病神のことだろ」と陰口をきいた。
 首相は未知のウイルスにかこつけて、緊急事態宣言を発令し、移動の自由を制限して政府批判を一切禁じてしまった。国民の多くは嘆き悲しんだが、一夜明けると、首相や閣僚の多くが逮捕されていた。緊急事態宣言で社会の活動が停止した間に、宗主国の軍隊が腐敗した政治家を一掃したのだった。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 00:52| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする