2020年03月03日

瀬戸賢一の『書くための文章読本』

 文章表現のコツは、ずばり「文末」にあると指摘して、分かりやすく、豊富な用例で説明した好著。しかも、引用されているのが古典的な名作だけでなく、現代小説やエッセイ、一般教養書など多様である。
 日本語には「です・ます体(敬体)」と「普通体(常体)」という文体の違いがある。両者を混ぜてはいけないと、学校の授業では教えているが、実際の表現を見ると、「普通体」の中に「です・ます体」が含まれていたり、「です・ます体」の中に「普通体」が含まれていたりする。前者はエッセイなどで読者に呼びかけたりする場合である。後者は話し言葉の中で、自問自答する場合などである。
 文章には表現する「語り」と、表現される「内容」があるわけだが、「です・ます体」を使うことで、「語り」の声が前面に出る。反対に、「普通体」を使うことで、「語り」の声は背後に隠れ、読者は直接「内容」に触れるようになる。小説の場合なら、介在する言葉の存在を忘れて、物語の登場人物に「同化」して、その視点(視座)から「物語世界」を見るようになる。
 文末表現で次に重要なのは、文末を「する」で止めるか「た」で止めるかである。小説の世界は基本的に「た」で止めることが多い。過去の事実として述べているわけだが、状態を表したり、あたかも現在体験しているように書くときには、あえて「する」の形で止める。英文法で言う「歴史的現在」の用法である。ただし、英語とは異なり、「た」で書くところを「する」と書いたところで、レトリックというほどのこともない。日本語としては、ごく自然な用法だからである。
 その他、日本語に豊富な終助詞や、自問自答、修辞疑問文、倒置文などの用例を挙げ、日本語の文末をいかに変化に富んだものにするか、懇切丁寧に教えてくれる。

参考文献
瀬戸賢一『書くための文章読本』(集英社)


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posted by 高野敦志 at 02:32| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする