2020年01月11日

あっちの湯とこっちの湯(2)

 甲府駅に戻り、塩山駅の普通列車に乗り、山梨市駅で降りた。ここまで書くと、勘がいい方はどちらに向かおうとしているお分かりだろう。その年の春、石和温泉に泊まった翌日に、甲斐善光寺に詣で、その足でほったらかし温泉を目指したことを、すでに書いているからである。
 今回も山梨市駅から、午後一時四十分発のフルーツセンター行きのバスに乗った。笛吹川フルーツ公園に向かうバスである。急坂をぐんぐん上っていくと、見晴らしのいい高台に、巨大な温室がいくつも並ぶ公園が見えてくる。前回と同じように、見物する時間がないので、ほったらかし温泉に通じる道を歩き出した。
 バス停を降りたすぐ先に、峠の関所のように見えるのが横溝正史館である。前回は思いもかけず見学することになり、ユーモアのある女性学芸員と、友人が幼い頃怖がった『犬神家の一族』の白い面のポスターの話題で、大いに盛り上がったものだった。
 本当は、もう一度訪ねてみたかったのであるが、土曜日と日曜日しか開館しないことに気づいた。横溝正史が執筆に使っていた離れは、雨戸も門も閉まっている。それを見た途端、友人はあのポスターが、展示室の闇の中に封印されているんだと想像するだけで、かえって不気味な気がするんだと洩らした。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:38| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする