2020年01月06日

「贋作 男はつらいよ 大阪の寅やん」

 山田洋次監督が『男はつらいよ』の舞台を、東京の葛飾柴又から、東大阪の石切に移し、登場人物や団子屋「くるまや」のセットはそのままに、パロディーを作ってみたという趣向。贋作といっても、原作脚本は山田洋次である。パロディーなら、本物とどこをずらしているかが見どころになる。東京と大阪では風俗や人情も異なるだろうし。
 このドラマを十分に楽しむためには、本物の映画を見ておいた方がいい。『男はつらいよ』の第九作に「柴又慕情」があるが、贋作はそれが下地になっている。本物では金沢を旅していた女三人組の中に、気難しい小説家の父を持つ歌子が出てくる。一方、贋作では箱根を旅していた歌子たちが、箱根で番頭をしていた寅次郎と親しくなり、石切に帰郷した寅次郎と再会する流れとなる。
 大きな違いと言えば、本物では二十年ぶりに帰郷して、妹さくらと博の結婚に立ち会うという設定だったが、贋作では三十五年ぶりの帰郷となり、さくらはすでに博と結婚して、満男も生まれている。贋作で寅次郎を演じる桂雀々が、本職は落語家ということもあり、出奔後に落語の修業をしたものの、逃げ出して的屋となったという話になっている。顔が四角いところは、渥美清とよく似ており、落語家ということで、語り口にも独特の味がある。ただ、本物の寅次郎が持っていた極道の雰囲気が欠けている。
 寅次郎の帰郷と、歌子たちとの出会いをぶつけたために、本物の映画を見ていない者にとっては、何とも慌ただしい筋書きとなっている。しかも、一回の放送が五十分に限られているので、各人物を掘り下げて描く余裕がない。そのため、本物に登場した俳優の演技がいかに素晴らしかったかということを、改めて感じさせられた。
 本物の歌子は吉永小百合が熱演したが、贋作では松下奈緒が演じている。どちらの女優も匂い立つような雰囲気があるので、次作で松下がどのような演技を見せてくれるか楽しみである。(つづく)


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posted by 高野敦志 at 00:17| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「は」と「が」の使い分け(第3版)

 日本人が何気なく使っている「は」と「が」は、外国人の日本語学習者には、なかなか習得することが難しい。同様の区別がある韓国語の話者なら、すぐに理解してもらえるが、中国人や欧米人には、煩雑すぎてなかなか理解してもらえない。読んだり聞いたりする分には問題なくても、いざ表現する段になると、上級レベルの学生でも間違えてしまうことが多い。
 古代の日本語では主題の「は」は、用いられていたが、主格の「が」の位置には何も現れなかった。「我が国」の例に見られるように、現代語では所有の「の」に相当する表現として、「が」は用いられていたのである。

 色は匂へど散りぬるを(現象である花は咲いても散ってしまうのに)「いろは歌」

 むかし、男ありけり。(昔、男がいた。)「伊勢物語」

 外国人は初級で「は」と「が」を習うのだが、基本的な用法を習得しないまま、さまざまな用例にぶつかって、混乱してしまうことが多い。とりあえず辞書を見れば、文法的な説明は書いてあるのだが、細かく分類してあるので、途方に暮れてしまいがちである。外国人に微妙な使い分けを教える場合は、要点をとらえて、これだけ知っていれば、九割方は正しく使いこなせるようにするのが、実用的な教え方である。
 留学生に「は」と「が」の使い分けを、分かりやすく説明してほしいと頼まれたので、試みに資料を作ってみた。外国人の中級・上級レベルの学生に教える場合や、日本語学習者で使い分けの区別を確認したい場合は、以下のリンクでpdfの文書を開いてみてほしい。
watoga.pdf

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