2020年01月03日

山田洋次の『悪童(ワルガキ)』(1)

 これは山田洋次監督の初の小説で、『男はつらいよ DVDマガジン』に「けっこう毛だらけ 小説・寅さんの少年時代」とタイトルで連載されていたものを、改題して加筆したものだという。のちに、『少年寅次郎』の題名で岡田惠和によって、NHKでドラマ化された。
 小説『悪童』は車寅次郎が、酒の席で少年時代について語るというスタイルを取っている。一人称小説ということになるが、江戸弁を使ってるからといって、夏目漱石の『坊っちゃん』のように、計算し尽くして書かれたという感じではない。勝海舟の父は、正式には勝左衛門太郎惟寅で、号は夢酔だが、勝小吉という通称の方が知られている。海舟の父小吉が残した『夢酔独言』の、飾らないが琴線に触れる語り口に近い。
 山田監督はシナリオを書くように、この小説を書いていったんだなと感じた。スタイルは渥美清が演じた車寅次郎のもので、活字を見るだけで寅次郎の声が聞こえてくる。ただし、一人称小説の形を取ったことで、寅次郎が知ってることしか書かれていない。映画『男はつらいよ』では、寅次郎の思いと取り巻く人々の心のすれ違いが、笑いと哀愁を呼ぶのだが、一人称を選んだことで、映画のような複数の視点からの表現ができなくなった。(つづく)


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posted by 高野敦志 at 02:21| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする