2019年12月24日

ぼくがイヌ派だった頃(38)

 父の人工透析が始まると、妹も北海道から戻ってきた。親孝行がしたくなったのだろう。父を車に乗せて小旅行するようになった。ただ、平穏な時期は長くは続かなかった。父が一年余りの入院生活の末、敗血症で亡くなったのは、家を新築して二年ほど経ってからだった。
 葬儀が行われ、家から父の棺が担ぎ出された。門を出るとき、犬小屋にいる大五郎に向かって語りかけた。
「父ちゃんが行っちゃうよ」
 大五郎に通じたかどうか。父は数回の外泊を除けば、ここ一年ほとんど家にいなかったのだから、すでに過去の人になっていたのかもしれない。
 当の大五郎も老いていた。十五歳を過ぎてからは、以前のように駆け回ることもなくなった。真夏の暑さには弱かったから、犬小屋の前にブルーシートをかけて、日陰で休めるようにした。
 あれだけ好きだった散歩だが、坂道を上るのがきついらしく、もう帰ろうと言わんばかりに、坂を下るところでUターンしてしまう。その頃から心臓が弱ってきて、激しい息遣いをして、苦しげにうずくまることが多くなった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 13:13| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする