2019年12月19日

ぼくがイヌ派だった頃(37)

 その代わり、犬には人間の一億倍の嗅覚があるという。聴覚も十倍近くは鋭いというから、人間が感じ取れないわずかな兆候も聞き取るのだろう。それが人間には直感として映るのではないか。言葉を持たない動物ならではの能力である。また、動物には魂がないなんていうのも誤りで、言葉は話せなくても、動物には人間に劣らぬ感情があるのは、犬や猫を飼ったことがあれば自明のことである。
 言語能力を発達させた人間は、論理的分析を経ない理解を退化させてしまった。人間が社会生活を送る中で、直感はさらに抑圧されるようになった。身分社会では、権力者の権威を突き崩しかねない存在だからである。
 妹が北海道に引っ越す日、でかいカバンを引きずって玄関を出て、「大五郎、行ってくるね」と言ったとき、大五郎の直感は愛情と失望、怒りと結びついていた。普段は出したことのない、怒りに悲痛さの混じった声でうなった。「僕のことを見捨てる気か!」と叫んでいるように聞こえた。(つづく)


 「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:06| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする