2019年12月01日

カルロス・カスタネダの『イクストランへの旅』

 ドンファン・シリーズの三作目。ここまで読んできて、僕が気になるのは、カルロス・カスタネダという青年が、いまだに喜怒哀楽の感情に翻弄されているという点だ。カスタネダは人類学の研究をしているので、幻覚性の茸ペヨーテについての情報を、フィールド・ワークの形で調査している。だから、お金を払うから教えてくれ。その方が気が楽だからなどと、ドンファンに要求するのである。
 これは秘儀に参入する人間としては、信じがたい態度である。例えば、禅や密教の師に、お金を積むから、早く奥義を教えろというのと同じだ。そんなことを口にしようものなら、破門されておしまいだろう。カスタネダは秘儀に参入するという心構えがないまま、ドンファンに見込まれて、秘儀の世界に導かれていく。
 ドンファン・シリーズは、人類学のフィールド・ワークの形を取ったフィクションだから、紆余曲折の一部始終を、物語の形で提供しているのだろう。とはいっても、秘儀の世界の鍵は、物語の中にちりばめられている。例えば、夢見の法のテクニックである。夢を見ている間に、自分自身の手を見るようにする。それによって、無自覚で夢に翻弄されている状態を脱して、覚醒夢が見られるようになるという。
 夢をコントロールできるようになったら、自分のよく知っている場所に、夢の中で移動するようにする。夜であったら、夜のその場所に移動する。その技術に長ければ、意識の一部を体外に投射することも可能になるらしい。
 さらには、この世界そのものも、夢と同じように意識が作り出したものだという知見に到達するのだろう。ドンファンの場合は、幻覚性の植物を用いているわけだが、バイノーラル・ビートという音声技術によって、変性意識に至る方法がある。それがヘミシンクである。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:06| Comment(0) | 宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする