2019年11月30日

ある軍人の死

 軍人として祖国の勝利を信じていた中尉は、部下の戦死という地獄絵を目の当たりにしただけに、敗戦の知らせを聞くと、内心ほっとしたのだった。
 復員した中尉は政治家に転身した。原子力発電所の建設を進めたのも、核武装する好機だと感じたからだった。首相の地位にまで上り詰めたが、旅客機墜落事故で遭難者を見殺しにしたという疑念を持たれた。「本当のことが知られたら、某国と戦争になってしまう。真相は私が墓場まで持っていく」として、原因の究明を断固拒否した。
 首相を辞任した後、百歳を越える長命を保ったのも、ひとえに敗戦の屈辱を晴らさんがためだった。ついに真相を明かさずに死んだのは、軍人としての気概がなせる業だった。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:43| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする