2019年11月20日

ぼくがイヌ派だった頃(33)

 人間は年をとるにつれて、時間の進むスピードが速まる。今まで生きてきた時間と比べるので、子供時代の一年と成人してからの一年では、進み方がまるで違うのである。ましてや、犬が生きられる時間は、人間の五分の一くらいだから、十年過ぎれば初老に至り、若かった頃の元気よさは、たちまち影を潜めてしまう。
 大五郎が十三歳になったとき、古くなった自宅を壊して建て替えることになった。改築を頑なに拒んでいた父が、人工透析をしなければならなくなり、余命が長くないことを悟ったのか、元気なうちに新築した家に住みたいと思うようになったからだった。
 そのためには、地所を更地にしなければならない。子供の頃からの思い出の詰まった家ばかりでなく、美しい花を咲かせてくれた桃や椿、甘いほのかな香りを楽しませてくれたキンモクセイ、赤ん坊の味がするという実がなるザクロまで、庭木のほとんどが伐採されてしまうことになった。これは思っていた以上に心痛むことだった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:51| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする