2019年11月16日

沈みゆく野付半島(5)

 木道を戻っていき、二手に分かれた方に進む。下は海となっていた! 砂浜がすっかり浸食されており、海鳥が遊ぶ姿もない。木道の先には痩せ細った砂州、その先に水色の桟橋が、当時の姿をとどめているが。何というさびれ方だろう。今でも尾岱沼との間に航路があるようだが、不定期便で予約がなければ船は出ないとのこと。

 三時を告げるメロディーが流れてきた。僕が野草の写真を撮っていると、友人は先にネイチャーセンターの前で、初老の男性の話を聞いていた。
「四十年前に友達がここに来たんですよ。その時は僕は行かなかったんですが」
 そこで自分も二十数年前に来たときは、トドワラには朽ちた根が多く転がり、トドマツの立木も林のように残っていたことを話した。
「今じゃ立ち枯れした木が数本ですからね。見る影もない姿ですよ」
 男性はネイチャーセンターの二階で、トドワラの現状を知って仰天してしまったらしい。こんなに変わり果て、絶景が失われてしまったことに、時の流れを感じざるを得なかった。
「それに、野付半島自体が痩せ襲ってしまったみたいですね」
 沈降が進んで砂浜が削り取られ、トドワラは観光名所としての価値を失ってしまった。ナラワラが当時の姿をほぼ保っているのと対照的である。
「観光船もあると聞いたんだけど」
「人の姿がなくて、打ち捨てられたみたいですよ」
 予約がなければ、運行されない船など、半ば廃止されたようなものだ。団体客でも来なければ、船は出港しないのだろう。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:38| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする