2019年11月13日

沈みゆく野付半島(4)

 深夜に台風が日本海を通過したということもあろうが、本当に人気(ひとけ)が乏しかった。見渡す限りでも数人しかいない。それはトドマツの変貌と関係がありそうだった。トドワラと書かれた看板に、簡易便所が二つだけ。友人と僕のほかには誰もいない。トラクターが牽引する車にも、観光客の姿はない。当時からさびれた感じがしたが、これほどではなかった。
 木道を進んでいく。あのころはまだ、トドマツの朽ちた根が、天然のアートのように、砂地に無数転がっていた。動物の骨ならぬ枯れた大木の根が、トドマツの墓場といったさまを醸し出していた。今では大半が朽ち果てて、台風の高波で海中に持ち去られていた。砂州の先端にはまだ青いトドマツもあったはずだが、すでに立ち枯れした木が数本残るばかり。墓標すら姿を消しつつあるのだ。
 数年後には立ち枯れした木もすべてなくなり、打ち上げられ干からびた海藻と、生えたばかりの雑草が砂地に点在する、見る影もない姿に変わっていることだろう。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:27| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする