2019年11月11日

岡田惠和の少年寅次郎(4)

 車寅次郎の映像作品には、テレビ版と映画版の『男はつらいよ』、今回のドラマ『少年寅次郎』がある。細かい点を見ると、人物や舞台の設定に違いが見られる。映画版では昭和十五年の生まれだが、『少年寅次郎』では終戦時に下町が焼ける様子を夜通し見ていたところから、十歳前後になっていたはずである。すると、昭和十年頃の生まれでなければ辻褄が合わない。寅次郎の実家は当初「とらや」だったが、モデルとなった団子屋が「とらや」と改名したことに憤激した山田洋次監督は、団子屋を「くるまや」と改めた。『少年寅次郎』では当初から「くるまや」の店名が採用されている。
 今回、英語教師坪内散歩の娘、夏子が登場する。これは映画版『続・男はつらいよ』の設定と同じだが、テレビ版では坪内冬子となっていた。それはテレビ版では御前様が登場せず、坪内散歩の娘を坪内冬子としていたのが、御前様の姓も坪内で娘の名を坪内冬子としたため、坪内散歩の娘は坪内夏子と改められたのである。
 また、『続・男はつらいよ』では、三十代の寅次郎が、夢にまで見た生母菊と再会するのだが、『少年寅次郎』では初めて再会するのは中学生という設定である。細かい点を見ていくと齟齬が出てくるのだが、それは気にせずに各作品を楽しめばいいのである。
 生母菊と寅次郎の再会の場面は感動的である。思春期の揺れる思い、素直には喜べないが、内心では胸の高鳴りを抑えられない様子が、ごく自然な演技で表現されている。生母菊の不器用な愛情表現と、継母光子の抑制した思いが対照的である。葛藤に苦しむ寅次郎にとって、心の光となるのが坪内散歩の娘夏子である。寅次郎のほのかな恋心を、父平造が踏みつけて、次回の出奔へとつながるのだろう。哀しみ、喜び、憎しみ、甘さと苦みがバランス良く味わえる絶品である。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 05:10| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする