2019年11月04日

嵐の迫る阿寒湖で(4)

 次に向かったのは、チュウルイ島だった。アイヌ語で「波が荒い島」を意味する。この小島には、マリモの水族館がある。小雨が降り出していた。上陸したところで、傘を貸してもらった。マリモの誕生から苔としての生長、波の影響で丸くなった後、中央に空洞ができて崩れるまで、実物とともに写真で説明されていた。水槽の底には直径二十センチほどのマリモもあり、それが球形としての限界らしかった。
 建物の外の水槽にはニジマスがいた。空は分厚い雲に覆われ、雨のせいで遠くは霞んでいる。湖岸に打ち寄せる波が、マリモを形成していくさまが感じられた。大きな湖にこんな無人島があるのは不思議だった。
 僕は幼い頃読んだ『ウィリアム・テル』の一場面を思い出した。ゲスラー暗殺を企てた、ウィリアム・テルが、縛られて湖の小島にある牢獄に、小舟に乗せられていく場面を。台風が近づきつつある「波が荒い島」は、スイス独立のきっかけを作った英雄の挿話を連想させるほど、船がなければ脱出不能の孤島だった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:20| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする