2019年10月24日

ぼくがイヌ派だった頃(31)

 うちの南側には、「おけえり (お帰り)」と江戸弁で挨拶するおばさんが住んでいたことは、以前書いたとおりである。すでに代替わりして、息子夫婦の時代になっていた。そのうちでは白いサモエド犬を飼っていたのだが、飽きられてしまったのか、野良犬みたいに道を歩き回るようになった。
 大学の行き帰りに見かけるので、「かわいそうに。捨ててられてしまったのか」と母と話していたものである。その犬がたまたま開いていたうちの門から入り込んだことがあった。犬同士はほえたり、噛みつき合ったりで、大喧嘩が始まるものだ。大五郎の方は鎖につながれていたから断然不利である。
 ところが、窓の外を眺めていたら、サモエド犬がそそくさと近づき、何と大五郎と合体してしまった。平安時代の通い婚じゃあるまいし、しかも、大五郎はオスで立派な代物の持ち主だった。ここでようやく、サモエド犬の性別が判別した。
「大五郎は幸せだったのね」
 妹が笑っている。たしかに、気持ちよかったのかもしれない。ただ、大五郎がまき散らした子種がどうなったかは不明である。サモエド犬が母親になった姿も見ていない。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 11:15| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする