2019年10月04日

ぼくがイヌ派だった頃(28)

 台風が襲来した夜、高台にある家には暴風雨が叩きつけ、古い木造の平屋は縁の下から吹き込む風で、時折がたんと動くほどだった。大五郎の恐怖は極限に達していた。目が覚めた僕と妹は、雨戸に吹きつける音ではなく、ガリガリいう音に顔を見合わせた。
 どうやらうちの中に入れてほしくて、鎖につながれたまま流し台に立ち、木の雨戸をかじっていたらしい。すでに小さな穴が開いていた。サッシを開けて「やめろ」と声をかけても、言葉が通じるわけではない。こちらの声を聞きつけて、ますますかじる勢いは増していく。
 ついに、雨戸から大五郎が顔を出した。「こんばんは」と言ってるはずもないが、台風の雨風でびしょ濡れになった犬を、真夜中にうちに入れてやる発想が、当時の家族にはなかったようだ。番犬は外で飼うものという固定観念があったからで、ふたたびサッシを閉めて、そのまま寝てしまった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:17| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする