2019年10月24日

ぼくがイヌ派だった頃(31)

 うちの南側には、「おけえり (お帰り)」と江戸弁で挨拶するおばさんが住んでいたことは、以前書いたとおりである。すでに代替わりして、息子夫婦の時代になっていた。そのうちでは白いサモエド犬を飼っていたのだが、飽きられてしまったのか、野良犬みたいに道を歩き回るようになった。
 大学の行き帰りに見かけるので、「かわいそうに。捨ててられてしまったのか」と母と話していたものである。その犬がたまたま開いていたうちの門から入り込んだことがあった。犬同士はほえたり、噛みつき合ったりで、大喧嘩が始まるものだ。大五郎の方は鎖につながれていたから断然不利である。
 ところが、窓の外を眺めていたら、サモエド犬がそそくさと近づき、何と大五郎と合体してしまった。平安時代の通い婚じゃあるまいし、しかも、大五郎はオスで立派な代物の持ち主だった。ここでようやく、サモエド犬の性別が判別した。
「大五郎は幸せだったのね」
 妹が笑っている。たしかに、気持ちよかったのかもしれない。ただ、大五郎がまき散らした子種がどうなったかは不明である。サモエド犬が母親になった姿も見ていない。(つづく)


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2019年10月23日

タウシュベツは崩壊寸前?(8)

 幌加駅の近くでは、「森のトロッコ・エコレール」が往復1キロ運行している。自転車の足こぎで進むミニトロッコで、往復二十分楽しめるというが、線路幅が肩より狭く、車体の大きさも遊園地の幼児用なので、鉄道マニアの興味は引きそうにない。
 十二時頃にツアーは終わった。温泉文化センターに戻って靴を履き替えた。駐車場からレンタカーに乗り、鉄道資料館に行くことにした。士幌線の糠平駅があったところである。
 かつての繁栄ぶりは、館内の写真を見ると分かる。林業が衰えて人口が減少し、温泉郷を訪れる客も減った。立体模型では十勝三股がどれほど山奥で、士幌線が急勾配の山岳路線だったということも。下り坂を貨車が暴走するという事故も起きている。
 館内では士幌線全線の車窓風景を、ビデオで見ることができる。ただし、廃線に先立ちバス代行となった糠平〜十勝三股間は除く。帯広〜木野間を見て、途中を飛ばして黒石平〜糠平間を見た。雪の中ということもあるが、気動車の速度は乗用車より遅いのではないか。
 鉄道資料館から幌加方面に、糠平湖岸までの往復1.3キロを、足こぎトロッコで走ることができる。「ひがし大雪高原鉄道」である。こちらは線路幅はJRと同じなので、人力とはいえ、廃線跡を走る雰囲気がある。ただし、土日しかやっていないので、乗ろうにも乗れなかった。


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2019年10月21日

タウシュベツは崩壊寸前?(7)

 タウシュベツ川橋梁を後にした。車に乗って第五音更橋の脇を過ぎる。幌加駅の跡を見ることになっている。士幌線は廃止以前から、糠平〜十勝三股間が、バスの代行運転になっていた。その間、運休状態が続いたことで、幌加駅のホームや線路は放置され、結果的に保存されることになったのである。
 車を降りて林の中に入る。線路には手動のポイント(転轍機)も残っている。レバーを動かすことで、今でも切り替えすることができる。駅の周囲にも蕗が茂っていた。熊が食べた跡と糞も残っている。駅員の宿舎が土台だけ風雨にさらされている。かつては二百人以上の住民がいたというが。
「十勝三股駅をテレビで見たことがあるんですが。ここには列車が入ってくることはないとか、しゃべっていたんですが、今はどうなっているんですか」
「もう何も残っていないんですよ」と、ガイドが教えてくれた。番組で中継された構内が、今でも記憶に残っている。幌加駅と似たような物だったが、信号など鉄道施設はそのままで、いつでも列車が入線できる状態だった。それもすべて撤去されたということか。(つづく)


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