2019年09月30日

映画『ボブという名の猫』

 売れないミュージシャン、ジェームズ・ボーエンが、ヘロイン中毒に苦しみながら、動物好きの隣人ベティ、ソーシャルワーカーのヴァル、野良猫だったボブの愛情によって、中毒を克服し、更生していく物語。
 薬物中毒に陥る原因としては、家庭の不和が多い。また、中毒に陥る人間の職業では、ミュージシャンが多い。ジャズのサックス奏者、アート・ペッパーの場合もそうで、両親の離婚による愛情の欠乏があった。ミュージシャンが陥りやすい理由としては、音楽が麻薬に似ている点が挙げられる。感覚への刺激によって、人を至福の状態に導くからで、ミュージシャンの場合、演奏の不調が続くと、至福の感覚を麻薬に求めてしまいかねない。麻薬の中でもヘロインは特に危険で、過剰摂取で命を落としたり、禁断症状が訪れると、七転八倒の苦痛が待っている。
 この映画の舞台であるイギリスでは、薬物中毒者は犯罪者というよりは、病人という扱いを受けており、更生のためのアフターケアーが充実している。メタドンという代替の鎮痛薬が与えられ、ヘロイン中毒から抜け出せるように治療する。ただし、メタドンも麻薬の一種であるため、健康な体に戻るためには、メタドンの禁断症状も克服しなければならない。要するに、蟻地獄から抜け出すほどの試練が待ち受けている。
 ジェームズ・ボーエンが更生できたのも、とりわけ、ペディとボブの愛情によるところが大きい。薬物中毒の根底には渇愛があるからだ。映画に登場するボブは、茶トラの猫で、「意志の強い猫」として表現されている。野性が残っている一方で、飼い主に対する深い愛情を示す。添い寝してくれるのも、茶トラの猫である。『ボブという名の猫』はノンフィクションを映画化したもので、出演した茶トラの猫は、作者自身を更生させたボブ自身である。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 05:42| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする