2019年09月28日

猫の家出(8)

 次の日は土曜で、午前中は僕がうちにいた。弟の猫はやって来ると、餌を食べて立ち去った。まだ近くにいるんだろうと見回すと、お隣の芝生でひなたぼっこしている。いい気なもんだと思った。少ししてから庭に出ると、物干しのそばのコンクリートで、足を投げ出して休んでいるじゃないか。
 これはチャンスだと思った。いったんうちの中に入り、兄の猫をリビングに閉じ込めた後、玄関のドアを開けっ放しにした。そろそろと近づき、弟の猫の体を撫でた。何だか元気がない。連日のように夕立に遭い、今日はコンクリートに座ったまま、熱中症にでもかかったのか。すぐに立ち上がれまいと思った。すかさず、猫を両手で抱え込んだ。多少抵抗されたが押さえ込み、玄関のドアを閉めてから下ろした。
 猫は十二日間も外泊していたせいで、野生の臭いがした。リビングに入れられて、赤ん坊のような声で、オス同士威嚇し合うときみたいに、数分間抗議していた。
 どうして中に入れちゃったのと言わんばかりに。少しして、兄の猫が寄ってきて、弟の臭いをかいでいる。
「おまえ、随分いなかったじゃないか」とでも言ってるのか。弟の猫はすぐに大人しくなり、毛づくろいをしている。いやな臭いも次の日にはなくなり、以前のように甘えてきたが、風邪気味だったのだろう。口を大きく開けても、声がかすれてしまう。ニャーンと鳴けるには、二週間ぐらいかかった。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:猫,家出,帰還
posted by 高野敦志 at 06:20| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする