2019年09月21日

猫の家出(4)

 妹は弟の猫のことを放って、北海道に行ってしまった。初めの頃は昼間も庭で遊んでいた猫だが、お腹がすかなければ寄っても来ない。逃げ回る弟の猫を見て、きっと脅えているんだろうと思った。捕まえよう、捕まえようという意識が、猫には殺気として伝わっているのではないか。
 どうせ自分一人では捕まえられないわけだし。妹が旅行している間は、ひとまず餌だけ与えることにした。猫の猜疑心を解き、親しみを蘇らせることが先決なのだろう。
 朝と夕方、いつも餌をやってる時間に、弟の猫は現れた。皿に餌を入れてやると、恐る恐る近づいてきて、一口くわえて一メートル離れたところで食べた。ちょっとショックだった。これじゃまるで、野良猫と見知らぬおじさんみたいじゃないか。
 次は餌を皿に置いたままにして、うちの中から覗くことにした。窓をそっと開けたら、微かな音を聞きつけて、猫は逃げてしまった。これは重症だなと思った。
 そこで、餌を庭先に置いて、一メートル離れ、壁に寄りかかってそっぽを向いていた。猫は恐る恐る近づいてきて、こちらに警戒しながらも、餌を食べるようになった。この調子で慣らしていけばいいんだな。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:猫,家出,餌
posted by 高野敦志 at 02:56| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする