2019年09月18日

外面如菩薩内面如夜叉

 今は昔、天竺に御母と慕はれし耶蘇教の比丘尼ありけり。長者より慈善の金を集め、身寄りなき貧しき男女を養ひけり。病に倒れたる者にも療を施し、天女の化身と讃へられけり。しかるに、その実、幼き子らを人買ひに売り、巨万の富を得たり。苦しみに耐へてこそ、神の恩寵に与ることも叶ふべけれと説きて、慈善の金を医術に使ふも惜しみたり。売られたる子の多くは、淫欲に耽る獣の如き者共の餌食となり、無慙なる最期を遂ぐる者も少なからず。これ天魔波旬の行ひにあらずや。死して聖女に祭り上げられしも、因果応報の理により無間地獄に堕ち、百千万阿僧祇劫の間業火に焼かるる定めに、魔王へ助けを求めたるはいと浅ましとなむ語り伝へたるとや。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:23| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする