2019年09月12日

猫の家出(2)

 しばらく、弟の猫は大人しくしていた。ただ、僕が勝手口から出ようとすると、ついてきてしまった。その目を見て、ぎょっとした。「今がチャンスだ」とでも言わんばかりに、目が怪しく光っている。脱獄の機会を狙っている囚人の目だった。
 逃がすのはいつも、僕の妹である。忙しいと注意力が散漫になり、思わぬ失敗をしてしまうのだ。あれだけ気をつけろと言っていたのに、夏の朝、寝室に駆け込んで来るなり、弟の猫が逃げたことを告げた。
「バカじゃねえの!」
 妹が出窓を開けて、網戸をするのを忘れたために、そこから逃げて行ってしまったとのこと。しばらく、猫は庭で遊んでいたが、近づくと逃げ回るので、容易なことではつかまらない。
「私、仕事だから」と、猫のことは放って出かけてしまった。こちらは夏休みだから、任せられても文句は言えない。
「どうせ、餌の時間にならないと戻ってこないし」
 いい気なもんである。僕が庭に出ると、猫は草むらの中で遊んでいる。セミが飛んでくると、捕まえようとジャンプしている。部屋の中と違って、日の光や風に当たれるし、虫や鳥を追いかけていた方が、楽しいに決まっている。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:猫,家出,逃亡
posted by 高野敦志 at 02:59| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

小説「漁火」(pdf)

 佐渡を旅した青年が、夜の海に浮かぶ漁火を眺めながら夢想する物語です。舟橋聖一顕彰青年文学賞を受賞し、「青空文庫」にも収録されています。表紙と「青空文庫」に書いたあとがきも加えました。パソコンですぐに開けるpdfファイルなので、保存してからご覧下さい。特にfirefoxの場合、ブラウザのまま開かずに、pdfを保存してからにしてください。Adobe Acrobat Readerの「フルスクリーンモード」だと、バーチャルな書籍がモニターに再現されます。iTunesからダウンロードする場合は、ミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。
isaribi.pdf

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