2019年09月27日

猫の家出(7)

 翌朝も罠を仕掛けたが、弟の猫は一向に入ろうとしない。猫が罠にかかったところを覚えているのか、極度に警戒心が強いのか、ただ単におびえているのか。早くも妹の方があきらめ顔になった。手なずけるのも駄目で、罠も駄目となると、もはや手詰まりの状態である。あとは猫の気持ち次第か。
 夕方には、罠を仕掛けることもやめてしまった。猫を呼ぶと近づいてきたので、今までのようにちょっと離れて餌をやった。食べ終わった弟の猫は、ゆっくり立ち上がった。いつもはすぐに、門の方に去ってしまうのだが、今日はなぜか玄関の方に歩いてお座りした。
 もしや、家の中に入りたくなったのか。微かな希望が湧いてきた。ただ、玄関を開けようとしたら逃げてしまった。(つづく)


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2019年09月26日

猫の家出(6)

 夕方、罠を仕掛けておいた。弟の猫は近寄ってきた。唐揚げが匂うのか、入口から中を覗いている。でも、何だか怪しいと思ったのか? 実は子猫の時代に、母猫を捕まえて避妊しようと妹が言い出し、庭に罠を仕掛けたことがあるのだ。一回目は食いしん坊の兄の方が捕まり、二回目は母猫が捕まったものの、罠を持ち上げた途端に、入口をこじあけて逃げてしまった。
 あれから三年近く経つが、もしかすると覚えていたのかも? 同じ手には乗らないぞとでも思っているのか。
「よほど飢餓状態にでもならないと、罠に引っかからないわ」
 日が暮れてしまった。妹はため息をつくと、家の中に入ってしまった。僕は蚊に刺されながら、家の陰から罠の方を観察していた。暗がりから猫が、再び近づいてきた。入口に足を入れようとしている。でも、よく見ると、妹、妹の猫じゃないか。妹が捕まったところを見たら、弟の猫は絶対に罠にかからないだろう。
「こらっ」
 怒鳴った途端、妹の猫の後ろにいた、弟の猫も逃げてしまった。(つづく)


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2019年09月24日

猫の家出(5)

 妹が北海道から帰ってきた。僕は猫を脅えさせないように、しばらく餌だけやって、一緒に遊べるようになったら、家の中に入れればいいと言った。一旦は賛成した妹だが、ほどなく獣医のところに相談しに行った。
「私、疲れちゃった」
 電話をかけてきた妹は、野良猫みたいになった猫を、また飼い猫の状態まで戻すのに、気が遠くなってしまったらしい。すぐに庭に出たがる猫は、容易なことでは捕まらないだろうと獣医に言われ、罠で捕まえようと持ちかけてきた。
 猫との信頼関係を取り戻すことを考えていた僕は、騙して捕まえるという方法は気が進まなかった。とはいえ、いつ捕まるという当てもないので、試してみればいいと答えた。
 早速、妹は猫を捕獲する罠を借りてきた。鉄製の檻の奥に、斜めに延びた棒があり、そこに餌を挿しておく。魚の肉は軟らかいので、食い逃げされてしまう。鶏の唐揚げはよく匂うし、突き刺さっていると、なかなか抜けない。取ろうとして引っ張ると、入口の蓋が閉まる仕組みになっている。(つづく)


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