幸い、庭で動けなくなっているところを、妹の手で保護された。玄関脇に置いた丼の水は、片づけてしまってもよかった。ただ、うちの周りには野良猫がよく来る。食べ物はもらえても、水を探すのに苦労すると聞いていたから、そのまま丼に水を入れておくようにした。
ある夏の夜、僕は丼の中を覗いて仰天した。初めは大きな枯れ葉が入っているんだろうと思った。しかし、何だか厚みがあって盛り上がっている。まさか、野良猫が丼の中に糞をしたのではないか。水をあげていた恩を仇で返す気かと思った。
次の瞬間、ぎょっとした。茶色い糞の塊が動いたからである。よく見ると、それは大きなガマガエルだった。庭に池があるわけでもないのに、どこからやってきたのだろう。余りの暑さに、丼に入って水浴びしていたのである。
ガマの油といえば、ガマガエルの体表の分泌液を集めて作ったとされる軟膏で、香具師が怪しげな口上で売っていた代物。傷薬と称していたわけだが、毒物としての作用があり、ブフォトキシンには幻覚作用があるとされる。僕はガマガエルに化かされていたのだろうか。
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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