2019年08月09日

勝海舟の『氷川清話』について

 勝海舟については、中学生の頃、子母沢寛の『勝海舟』『父子鷹』『おとこ鷹』で知った。後の二作は海舟の父、勝小吉が主人公で、海舟の少年時代の逸話なども出てくる。勝小吉は『夢酔独言』という伝記の作者で、江戸時代の旗本が話し言葉で書いた本としても注目されている。利かん気で座敷牢に閉じ込められたことのある小吉だが、死を恐れず肝の据わったところや、相手の心底を見抜いて、歯に衣を着せぬ物言いをするところなどは、息子の海舟に受け継がれている。
 子母沢寛は勝小吉の『夢酔独言』と海舟の『氷川清話』を参照したはずだが、後者の流布本は編者の吉本襄が改変したもので、海舟の談話が意図的に歪められてしまっている。江藤淳・松浦玲編の『氷川清話』は、改変される前の海舟の語りを再現した物である。
 改変の多くは、海舟が徳川時代と明治時代を比較して、明治時代を批判している部分にある。伊藤博文など長州閥の人間を小人物として批判する一方、江戸無血開城をともに成し遂げた西郷隆盛や、東京遷都に同意して東京の繁栄に尽くした大久保利通を評価している。特に西郷の豪胆さには敬意を表している。
 徳川時代の人間が、いかに肝が据わっていたかを強調し、政治にとって最も重要なのは、誠心誠意であり、それによって人心を掌握し、外交も切り抜けることができると説いている。国によって差別せず、小国を軽んじなければ、大国からも敬意を表される点など、長州閥の安倍政権が学ぶべき点も多い。
 危機を乗り切り、偉業を成し遂げるには、肝が据わっていなければならない。海舟は若い頃、剣術と座禅でそれを学んだ。虚心坦懐、明鏡止水となってはじめて、死地を乗り切ることもできる。杓子定規や学問に頼っているだけでは、現実の社会は理解できない。たとえ学問のない、一般の庶民であっても、人生の極意を体得していた徳川時代は、儒教の精神が庶民にまで行き渡っていた時代だった。

参考文献 江藤淳・松浦玲編『氷川清話』(講談社)


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