2019年08月22日

丼に入っていたのは?

 うちの猫が家出したことがあった。寒い季節に三日三晩、野宿をしたのである。パニックになって、うちの中に戻ろうにも戻れなくなった。そこで、えさと水を屋外に置いて、飢えと渇きに備えることにした。
 幸い、庭で動けなくなっているところを、妹の手で保護された。玄関脇に置いた丼の水は、片づけてしまってもよかった。ただ、うちの周りには野良猫がよく来る。食べ物はもらえても、水を探すのに苦労すると聞いていたから、そのまま丼に水を入れておくようにした。
 ある夏の夜、僕は丼の中を覗いて仰天した。初めは大きな枯れ葉が入っているんだろうと思った。しかし、何だか厚みがあって盛り上がっている。まさか、野良猫が丼の中に糞をしたのではないか。水をあげていた恩を仇で返す気かと思った。
 次の瞬間、ぎょっとした。茶色い糞の塊が動いたからである。よく見ると、それは大きなガマガエルだった。庭に池があるわけでもないのに、どこからやってきたのだろう。余りの暑さに、丼に入って水浴びしていたのである。
 ガマの油といえば、ガマガエルの体表の分泌液を集めて作ったとされる軟膏で、香具師が怪しげな口上で売っていた代物。傷薬と称していたわけだが、毒物としての作用があり、ブフォトキシンには幻覚作用があるとされる。僕はガマガエルに化かされていたのだろうか。


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2019年08月21日

はぎわら ふぐの『火山はめざめる』

 火山は湖や温泉、肥沃な土壌など、人間に多くの恩恵を与えてくれる。大半の時は休んでおり、細い煙を出しているくらいで、一生の間に一度も噴火しない火山が多い。
 はぎわら ふぐの『火山はめざめる』は、火山活動が人間にとってどのようなものか、噴火の状況やその時代の風俗を、子供にも分かる絵本の形でまとめたものである。
 浅間山の噴火の歴史が、四つの噴火を例に描かれている。火山はほとんど休んでいるから、活動していない時は考えなくても、大抵問題はない。噴火活動が始まっても、そのうち止まるだろうぐらいにしか思わない。
 それは自分自身の知っている範囲で、火山の噴火をとらえているからである。昭和時代の浅間山は、ブルカノ式噴火をしていた。火山灰を噴き出し、噴石をいくらか飛ばすくらい。警戒していれば、生命に危険を及ぼすことはない。日本人にとっての浅間山のイメージは、こんなものではないか。
 ところが、江戸時代の天明大噴火では、軽石と溶岩を大量に噴き出した。噴煙が柱となって上り続け、支えきれなくなって大規模な火砕流となり、麓の鎌原村を襲った。鬼押し出しはそのときに噴出した溶岩である。プリニー式噴火と呼ばれ、ポンペイの街を滅ぼしたのもこのタイプである。
 平安時代の天仁大噴火では、さらに規模が大きい追分火砕流を引き起こした。軽井沢はこのとき埋め立てられ、平坦な台地となった。それだけではない。浅間山は二万五千年前に、山体崩壊を引き起こした。その際の土砂なだれは、前橋、高崎、佐久平まで到達した。浅間山はこのような大災害を引き起こす危険な火山だが、何も知らない人の目には、穏やかに煙を吐く火山としか映らない。

参考文献 はぎわら ふぐ作・早川由紀夫監修『火山はめざめる』(福音館書店)


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2019年08月20日

特急「あずさ」で石和温泉へ(1)

 友人に誘われて、一泊二日の小旅行したのは、三月下旬のことだった。仕事を早めに済ませて、午後五時の中央本線特急「あずさ」に乗ろうと思った。システム変更で全席指定になり、すでに指定席は満席になっていたが、急ぐ場合には指定席料金を払い、席は指定せずに、空いた席に座れるという。
 何とも分かりにくいシステムだ。新宿駅で五時の「あずさ」に乗り込み、出入り口付近で立っていた。立川に着くと、空席ができたので、すかさず座った。八王子に近づくと、間もなく予約客が乗り込む黄色いランプがついた。やむなく立ち上がったが、空席きを示す赤いランプがついたので、すかさず移動した。椅子取りゲームをしているようなものだ。
 車窓に闇が迫ってきた。左右に迫る谷間を走ってゆく。断続的にトンネルを潜るから、どこを走っているか見当がつかない。暗い山中を列車はひた走りに走る。(つづく)


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