2019年08月25日

ぼくがイヌ派だった頃(21)

 大五郎は立派な犬に成長していった。垂れていた耳もぴんと立ち、引きずっていた足も、全力で走れるほどになっていた。一番の楽しみは「散歩」と「ご飯」だった。その言葉を聞くと、目を輝かせ、開いた口から大きな舌を覗かせて、はね回りながら鳴くのだった。
 普段は鎖でつないでいたので、散歩の時ぐらいは自由に走らせてあげたかった。大五郎が全速力で走ると、十八歳の僕でさえ、息がはずむほどだった。コースは大体決まっていたから、すぐに僕の方が引っ張っていかれるようになった。
 犬のしつけの基本は、犬に上下関係を教え込むことだという。散歩のときも勝手に走らせずに、人間の指示に従って歩かせるようにすべきだという。でも、そんなやり方は好かなかった。犬と一緒に走って汗をかくほど、犬との一体感が感じられるときはないからだ。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 02:14| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月24日

特急「あずさ」で石和温泉へ(3)

 温泉に入ってから朝食を取った。チェックアウトする前に、ホテルの日本庭園を歩いてみた。池をめぐる道と、奥から流れ落ちる小さな滝が、大名屋敷の庭園のように豪華だった。池には錦鯉が泳ぎ、水面には鴨の姿も見られる。芝の間に置き石の道が延びている。子供たちがはしゃいでいた。
 ホテルの車で石和温泉駅まで送ってもらった。まず、隣の酒折駅で下り、甲斐善光寺に向かった。人通りは少ない。日が差してきたので、のどかな感じになってきた。ただ。風は冷たい。不老園という梅園の脇を過ぎていく。もう梅は散り始めていたが。
 住宅街の中に、甲斐善光寺の巨大な本堂の屋根が突き出ている。農道のような田舎道はカーブして、山門の前まで続いていた。人気(ひとけ)がほとんどない。物寂しい境内で、線香立ての火も消えていた。
 ここは武田信玄が、長野の善光寺が兵火で焼かれるのを恐れて、善光寺の仏像や宝物を保存するために建立した寺院である。長野の善光寺が天台宗と浄土宗が共同で管理しているのに対し、甲斐善光寺は浄土宗の寺院である。長野の善光寺は、密教の護摩を修しているため、祈願のために参拝する人も多いのだが。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 15:39| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月23日

特急「あずさ」で石和温泉へ(2)

 甲府駅に着いた。いったん改札を出て、入り直してから上りの高尾行きに乗る。石和温泉駅には午後七時前に到着した。地図に頼って外灯のない川沿いの道を進んだ。
 食事は午後七時からだった。友人に電話すると、ロビーまで迎えに来てくれた。
「指定席が取れなくてね」
「ずっと立っていたの?」
 そこで僕は、指定席が取れなくても座席に座る裏技を伝えた。
 荷物を客室に置いてから、食堂に向かった。バイキングの夕食を食べ、少し休んでから大浴場に向かった。温泉は強アルカリ性だった。肌がすべすべするので、肌が若返ったような気がする。
 客室に戻ると、蒲団らしき物が敷いてあったが、マットレスにシーツがかけてあるだけだった。床に転がっているのと同じで、背中が痛くなった。長屋の煎餅蒲団で寝ているみたいだと、僕は友人にぼやいた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 02:33| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする