2019年07月26日

ぼくがダライラマ?(75)

 摂政は感情を押し殺して語り出した。それはダライラマであるぼくの行状を、ことごとく糾弾するものだった。仏道修行を怠るばかりか、髪を伸ばして俗人の風体でラサの街を徘徊し、あまつさえ、悪所に出没していることなどだった。
「平民どもは何と噂しているか、知っているのか。日が暮れると法王さまそっくりの男が現れ、辻に立ってる女を曖昧宿に連れ込む。その男は何しろあれがうまい。一度魔の手に落ちた女は、もう普通の男では満足できなくなると」
 話を進めるにつれ、摂政の感情は高ぶっていった。吐く息は荒くなり、まなじりのあたりが震えだした。絶望したように天井を仰ぐと、祈りの言葉を唱えた。ぼくは答えずに、摂政の所作を観察していた。
「どうしてだ。なぜ口をきこうとせぬ。そうかそんなに憎いか。そなたを両親から引き離し、また娘との仲を引き裂いたのが。はっきり言うんだ。憎いなら憎いと」
「憎いです」 (つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:05| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする