2019年07月12日

ぼくがイヌ派だった頃(8)

 どうしても我慢できなくて、一度だけ物置の戸をこっそり開けたことがある。床の上にはクロらしい体が横たわっていた。ほとんど動かず、息をしているのかも分からなかった。見てはいけない物というのは、これだったのか。ぼくはのぞきに行ったこと自体を、さっきまで忘れていたのだ。
 それから一週間もたたないうちに、母は小学校から戻ってきたぼくを座らせると、まじまじと見つめながら言った。
「クロが死んだの」
 何と答えたらいいか分からなかった。あの時のクロは、生きていたとしても虫の息だったのだろう。ぼくが黙ったままなので、母は話を続けた。
「クロをね、リンゴの木箱に詰めたの。お花を入れて飾ってあげたわ。そして、焼いてもらうために引き取ってもらうことにしたの」
「どうなるの?」
「動物のお墓に一緒に入れられるのよ」
 ぼくは見たいと言ったが、母は決して許してくれなかった。次の日の朝に、クロは清掃局に引き取られていった。母の話はどこまで本当だったのか。死体処理を頼んだわけだから、墓地に入れられたかどうか。他の焼却灰とともに、埋められてしまったのかもしれない。ぼくの幼年時代はこうして終わった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:02| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

高野敦志編『高野邦夫詩撰』(pdf)

 高野邦夫は昭和3(1928)年、現在の川崎市幸区に生まれました。太平洋戦争末期に予科練に入隊。戦場に送られる前に終戦を迎えました。戦後は国語の教員を務めるかたわら、詩を書き続けました。日本詩人クラブや俳人協会の会員でした。平成9(1997)年、敗血症で亡くなりました。享年68歳でした。生前刊行された父の詩集、および遺稿から選び出した詩篇を『高野邦夫詩撰』としてまとめました。今回はパソコンでも簡単に開けるpdf版をアップロードいたします。パソコンに保存してからご覧下さい。
 なお、iTunesでダウンロードした場合、マイミュージックの下にiTunesのフォルダがあり、iTunes Music、その下にpodcasts、さらにその下のフォルダにpdfファイルは入ります。ダブルクリックすれば、Adobe Readerですぐに読めます。フルスクリーンモードで表示すると、モニターでも読みやすいと思います。下のリンクをクリックして下さい。
kunionoshi.pdf

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。

以下に高野邦夫の著作を挙げます。

詩集

『寒菊』(1962 五月書房)
『氷湖』(1978 昭森社)
『燦爛の天』(1980 昭森社)
『定時制高校』(1982 昭森社)
『川崎』(1983 昭森社)
『修羅』(1984 昭森社)
『彫刻』(1985 昭森社)
『曠野』(1985 芸風書院)
『銀猫』(1986 昭森社)
『日常』(1987 昭森社)
『川崎(ラ・シテ・イデアル)』(1989 教育企画出版)
『短日』(1991 吟遊社)
『峡谷』(1993 吟遊社)
『鷹』(1994 吟遊社)
『敗亡記』(1995 吟遊社)
『廃園』(1998 遺稿 吟遊社)

句集

『高野邦夫句集』(1987 芸風書院)


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