2019年07月04日

ぼくがイヌ派だった頃(7)

 しばらくして、クロの姿は見えなくなった。もはや立っていることができず、犬小屋では雨風を避けることができないことから、物置に移したということだった。
「クロのことが見たい」
 ぼくはクロの病が良くならないのは感づいていたが、母が何を恐れているのか分からなかった。ぼくには元気なクロの姿しか、思い出の中に残さないように計らっていたのだろうか。
「だめよ」
 いざとなったら、父母のいない間に、物置をのぞきに行くことだってできたのに、ぼくは母の言葉に逆らえなかった。その代わり、小学校から戻ってくると、母にクロの様子を聞くことにした。
「クロは具合が悪いのよ」
 どこがどう具合が悪いのか、母は説明しようとしない。やはり触れてはならないものがそこにあるのだった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:33| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする