2019年06月05日

ぼくがイヌ派だった頃(2)

 やがて、ぼくにも妹ができたのだが、子供は男と女が一緒にいるだけで、自然に生まれてしまうぐらいにしか思っていなかった。うちの前の道も舗装されておらず、砂利が一面に広がっていた。しかも、坂道だったから、大雨が降ると、川の流れのようになってしまうのだった。
 雨が上がった日、砂利道を隔てた段々畑の間を、妹の手を引き登っていくと、両側に灌木が茂る一本道へと出た。モミの木の兄弟が偉そうな顔して立っていた。周りにはカシやクヌギも生えていたが、モミの木の三本ほど力強く根を食い込ませ、こずえから遠く先まで見下ろしている巨木はなかった。あれはこの丘を守る神さまなんだ、と子供ながらに思ったものだ。
 モミの木の脇を過ぎると、ふいに前方の視野が開け、草の生える平坦な台地が、はるか彼方の崖まで伸びていた。西側のゆるやかな斜面には畑が広がり、落ちたらやばい肥だめもあった。ススキがなびく原っぱも、歩き回ると所々、塹壕に似たくぼみがあって、風の強い日には隠れ家や、お握りを頬張るための縄張りとなっていた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 02:17| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする