2019年06月03日

ぼくがイヌ派だった頃(1)

 ぼくが飼っていた犬の話をしよう。初めて飼ったのは、黒くてお腹が黄土色の犬。シェパードの雑種だったようだ。名前はクロ。まだ物心がつく前からうちにいて、柴の木がまだ育っていなかった庭で、一緒に走り回っていた。
 でも、クロの方からしてみれば、ぼくは弟みたいなものだった。幼児のぼくは散歩に連れていけない。首輪につけたリードをつかんでも、ぐいぐい引っ張られて、転びそうになってしまう。走り出すと開いた口から鋭い歯が見え、激しく息をするさまを見ると、ちょっとこわい気もした。オオカミの野生がまだ残っていたのか。
 その当時、家の東の窓からはなだらかな丘陵が見えた。今は灰色の団地が建ち並ぶあたりも、子供たちが駆け回る自然の庭だったのだ。牧歌的な空気の中でぼくは生きていた。自然が豊かなだけではない。夢と現実の境があいまいで、瞬間のイメージは残っていても、どんな具合につながっていたか分からない。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:54| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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