2019年05月30日

五稜郭は和洋折衷(10)

 函館山を下りようとしていたら、続々と観光客が上ってきた。夜景を見るのはこれからだからだ。客の多くは中国人で、韓国人や東南アジア系も混じっている。今日は真冬の平日だから、普通の日本人はまだ働いている。下りのロープウェイは、僕と友人しか乗っていない。
 山麓駅の周りには、教会が幾つか並んでいる。その中でひときわ目を引くのが、函館ハリストス正教会である。緑の屋根に白亜の壁を持つ塔は、中東のモスクに似た美しさがある。尖塔がシルエットとなって、夕陽に染まる大空に映えるさまは、息を呑むほどである。通りは残雪が凍っていたが、人が通れるほどの幅で除雪されていた。
 ロシア正教の教会は、東京ではニコライ堂ぐらいしか知らない。ただビルの谷間に埋もれ、車の通りが激しいお茶の水の街では、緑色のドーム屋根もすすけて見える。やはり、ロシアのように冷たく澄んだ空気が、正教の教会を美しく見せるのだ。(つづく)


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2019年05月29日

ぼくがダライラマ?(73)

 また会いたいと言うと、女は素っ頓狂な笑い声を上げた。こちらが呆気にとられていると、ますます調子に乗った。
「女を買いにくる観音さまってわけね。でも、明日の晩には、他の仏さまと床を共にしてると思うわ。隔てがあってはならないのよ。すべての女に情けをかけよっていうのも、御仏の有難い教えなんじゃないの?」
 ぼくはますます気に入って、女の腰を抱き寄せると、脇腹を密着させた。この女はこちらの本性を見抜いている。ぼくは箍(たが)が外れてしまったのだ。魔物に取り憑かれたかのように、ラサの街を徘徊する自分が見える気がした。
「図星でしょ」
 女は慣れた手つきで、ぼくの肩に手を回した。夜が白みつつあるのを忘れて、欲望の任すまま、二匹の蛇のように求め合った。ふしだらを信条とするこの女に、ひたむきな美しさを感じた。その後、何回かこの女と情交を重ね、互いに関心が薄れると別れた。ぼくは記憶にとどめるために、一篇の詩を書いた。

 馴染みとなったこの女は
 狼の血を引く生まれだ
 肉と肌に満たされるや
 丘に向かって駆けていく

(つづく)


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2019年05月28日

五稜郭は和洋折衷(9)

 二回目にここを訪れたとき、僕は津軽海峡線に乗るため、夕闇に沈む前に山を下りざるを得なかった。沖ではイカ釣りの漁火がともりだしていた。僕が津軽海峡を眺めた辺りは、今日は雪が積もっていて近づけにない。
 時間的に余裕がないのだから、夜景を見るのは諦め、昼下がりの函館の街を眺めることにした。眼下の教会や、市電の走る大通り、停泊した連絡船の摩周丸、海岸に打ち寄せる波、今朝止まっていた湯の川温泉、さらに遠方で雪をかぶる駒ヶ岳。
 本物の夜景の代わりに、展望台で夜景のビデオを上映していた。函館の夜景が美しいのは、建物の輪郭が分かるほどの絶妙の高さにあること、くびれた地形で街並みが浮かび上がって見えること、さらに雪が積もっていると、建物の輪郭が映えることなどがあるという。(つづく)


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