2019年04月18日

連体修飾節内の動詞について

 連体修飾節とは名詞を修飾する節である。「兄が撮った写真はこれです」のうち、「兄が撮った」の部分が連体修飾節で、修飾される名詞は「底の名詞」と呼ばれる。「兄が撮った写真」のように、「底の名詞」である写真が元の文である「兄が写真を撮った」の中に含まれている場合を「内の関係」、「鳥が飛んでいる写真はこれです」のように、連体修飾節が修飾される名詞の内容を表し、「底の名詞」(写真)が連体修飾節(鳥が飛んでいる)の中に含まれず、外から付加された場合を「外の関係」と呼ぶ。
 寺村秀夫によるこの区別は、文法研究の上では重要だが、連体修飾節を学ぶ外国人がまず戸惑うのは、連体修飾節の中に含まれる動詞の種類によって、意味が異なってくるという点である。

1 本を読んでいる人は陳さんです。
2 本を読んだ人は陳さんです。
3 陳さんが読んでいる本は、夏目漱石の『こころ』です。
4 陳さんが読んだ本は、夏目漱石の『こころ』です。

「読む」「書く」「話す」など動きに時間がかかる「継続動詞」の場合、「読んでいる(人・本)」は、現在「読んでいる」という継続の状態を表している。一方、「読んだ(人・本)」の場合には、もう読んでしまったという過去のテンス(時制)を表す。そのため、両者の意味に違いが生じるのである。

 では、連体修飾節内の動詞が「着る」「はく」「かぶる」など、動きが瞬間に終わる「瞬間動詞」の場合はどうだろうか。

5 メガネをかけている人は陳さんです。
6 メガネをかけた人は陳さんです。
7 陳さんがかけているメガネは汚れている。
8 陳さんがかけたメガネは汚れている。

「メガネをかけている人」「メガネをかけた人」は一般に同じ意味で発話される。「かけた」の「た」は完了を表している。「一方、「陳さんがかけているメガネ」は、現在かけているメガネであり、「陳さんがかけたメガネ」の方は、「かけた」の「た」を過去のテンスととらえることが多い。
 この違いはどこからくるのだろうか。「底の名詞」が「人」の場合は同じ意味で、「物」の場合には意味に違いが生じると、とりあえず教えてしまってもいいかもしれない。ただ、そう教えてしまうと、次のような例文が出て来ると困ってしまう。

9 (陳さんは)しみがつい(い)てるズボンをはいている。
10 (陳さんは)しみがついたズボンをはいている。

「底の名詞」がともに「物」であるにもかかわらず、両者の意味は同じである。7と8には違いがあり、9と10に違いがないのはなぜか。それは7と8では、連体修飾節の部分に動作主の「陳さん」が含まれているのに対し、9と10では連体修飾節に含まれる「しみ」は「物」だからである。
 連体修飾節内に「動作主」が含まれることで、「陳さんがかけているメガネ」は、現在かけている状態、「陳さんがかけたメガネ」は過去にかけたことをことを表す。それに対して、連体修飾節の中に「動作主」が含まれない9と10では、「しみがついて(い)るズボン」も「しみがついたズボン」も、ともにスボンの状態を表しているのである。


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posted by 高野敦志 at 04:58| Comment(0) | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ネルヴァル Nerval の短編「緑の怪物」(ePub)

 19世紀フランスの狂気の詩人、ジェラール・ド・ネルヴァルの短編「緑の怪物」を新訳でお送りします。夢と現実の間をさまよいながら、シュルレアリスムの先駆的作品を生み出し、20世紀になってから再評価されたネルヴァルですが、今回紹介するのは、ネルヴァルの狂気の側面がうかがえる怪談です。
 作中には多数の固有名詞が出てきますが、余り気にせずに読み進めて下さい。注釈は最低限にとどめました。以前、「緑の怪物」の要約をブログに載せましたが、今回はガリマール社版の『ネルヴァル全集』第3巻を用いて全訳しました。なお、筑摩書房の『ネルヴァル全集』第4巻には、中村真一郎訳の「緑の怪物」が収録されています。
(注、ジェラール・ド・ネルヴァルをフランス語で表記すると、Gerard de NervalのGerardは、本来ならeにアクサン・テギュ accent aiguが付きますが、文字化けが発生するため、アクセント記号は省いてあります。)

 以下のリンクから、拙訳をダウンロードして下さい。
lemonstrevert.epub

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