2019年01月11日

渋谷メルトダウン

 学生がSNSの「渋谷メルトダウン」というInstagramを紹介していた。食堂で丼に顔を突っ込んで寝ていたり、電車の床や駅の階段で倒れ込んでいたり、ひどい場合には、路上で大の字に寝ている。学生、サラリーマン、OLなど、泥酔して意識を失ってる人ばかりを、日本在住のオーストラリア人が撮影して、Instagramに公開しているものである。
 それについて学生は、日本という国の治安の良さを挙げていた。無防備な姿で寝ていれば、海外だったら、たちまち犯罪の餌食にされてしまう。以前、インド人に聞いた話だが、インドでは泥棒が犯罪目的で、駅の電源を切ってしまうことがあるそうだ。真っ暗になった途端、人々は取られまいとして荷物を胸に抱きしめる。
 それと比べたら、確かに日本は治安がいいのだが、「渋谷メルトダウン」のタイトルが何を暗示しているかについては、学生の文章では触れられていなかった。これには日本人に対する批判が込められているのに。
 ただ泥酔している人を撮影しただけなら、「渋谷の酔っぱらい」でも良かったはずだ。日本人の多くは気づいていないようだが、海外では福島第一原発の爆発と原子炉のメルトダウンが、人々の大きな関心の的になっている。原発の事故は現在進行中であり、原子炉が底抜けて地盤を溶かし、いかなる大惨事を引き起こすかも分からない。
 日本文化は繊細で奥深い、日本人は思いやりがあって、和の精神を重んじるとか、よく言われるが、原発事故のような想像を絶する事故が起きると、判断能力が麻痺してしまうようだ。せっかく集めた放射能汚染土は、ビニール袋に入れられたまま放置されている。袋には穴が開いた物も多く、海岸線に延々と並べられている。津波でも来ようものなら、膨大な量の汚染土が太平洋に流れ去るだろう。
「渋谷メルトダウン」というタイトルは、原発事故の実態から目をそらす日本人に、冷ややかな視線を向けているのだ。メルトダウンしたのはフクシマだけではない。日本人もぶっ壊れているのだと。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:29| Comment(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする