2019年01月07日

ぼくがダライラマ?(63)

 ついに婚礼の日が訪れた。式が始まったのは昼下がり。中央にはトルコ石で飾られた髪飾り、極彩色の花嫁衣装に身を固めた摂政の娘。新郎となる貴族の青年は、緊張のせいか目尻が震えている。
 ぼくはその前に座らされていた。横には摂政サンゲ・ギャツォが控えている。会場には近親や貴族、ラサの大寺院の高僧が参列していた。背後の白壁からは吉祥を表す五色の垂れ幕、巨大な釈迦牟尼のタンカも下げられている。
 中央のテーブルにはバターで作られた極彩色の花、トルマが咲き乱れ、香炉からは白檀の煙が上っている。山と積まれたツァンパと、白米に豆や果実を炊き込んだご飯、ヤクのカレーやゆでた羊肉、水餃子のモモ、氷砂糖のお菓子。そして婚礼の席には欠かせない麦酒、チャンも。
 ぼくは正面に立つ彼女の顔を見た。緊張のせいか、凍りついたように表情を変えない。茶目っ気のあった瞳も、生気を失ったように動かない。摂政の顔を見ることはできなかった。正装した姿から発する威厳からは、怒りに似た感情が漂っていた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 02:53| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする