2018年12月24日

フクシマから来たウサギ(4)

 それからまた二年ほど過ぎた。ウサギにとっては、日の長さが変わることと、暑くなったり寒くなったりすることが 時間をとらえる手がかりだったが、女性の部屋の明かりやエアコンの空気調節により、いつも快適な時を過ごせることで、時間の感覚を失っていた。
 ただ、遺伝子に組み込まれた命の時計は、確実に終末に向かって進んでいた。ウサギは寒くもないのに、クシャミを繰り返した。人間もクシャミぐらいはするもので、鼻風邪みたいにすぐに治るんじゃないか? 獣医に診せると、スナッフルという病気だと言われた。処方された薬を飲ませると、すぐにクシャミは止まった。そこで薬をやめてしまった。
 ところか、潜伏した菌は耐性化していった。しかも、放射能の影響がふたたび現れ、免疫力は低下していたから、止まらなくなったクシャミは、黒いウサギの鼻孔をふさぎ、鼻をかむこともできないから、鼻水が気管支に流れ込んだ。ぜいぜいする音が聞こえ、苦しくて口を開けてあえいだ。それはちょうど、人間における喘息の発作に似ていた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 04:07| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする