2018年12月23日

フクシマから来たウサギ(3)

 幸せな日々は五年ほど続いた。その頃からウサギは、元気を失いはじめた。食欲が衰えて体重も減ってきた。子供の頃に浴びた放射能の影響かどうかは、ウサギはもちろん、女性自身も考えたことがなかったが。
 獣医に診察してもらうと、どうやら卵巣癌にかかっているらしいことが分かった。生殖機能は失われてしまうが、命を助けるには他に方法がない。伴侶がいないのだから、もとより子孫は作れない。手術が行われて、ウサギは一命を取り留めることができた。
 こうして黒いウサギは、ウサギ並みの寿命を生きられることになった。ただ、老いというものが迫ってきた。以前の美しい毛並みも艶が失われ、歯が曲がって生えてきたことで、大きなままの野菜や果物が食べられなくなった。女性がそれに合わせて、小さく切ってくれたから、食べる上で不自由することはなかった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 11:43| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする