2018年12月22日

フクシマから来たウサギ(2)

 ウサギは女性に可愛がられ、見違えるような生活を送った。野原を駆け巡ることこそなかったが、女性の部屋の中で跳び回り、朝夕には新鮮な野菜と果物を与えられ、清潔な籠と部屋の間を出たり入ったりした。
 好物は食事ごとに与えられる桃と干しぶどうだった。人参、大根、青菜、香菜など、野菜の種類も多かった。女性の冷蔵庫の三分の一は、ウサギの食べ物で常時占められていた。
 女性は黒いウサギを、我が子のように可愛がった。ウサギの方でも、女性に抱かれている間は、フクシマで死んだ母や兄弟たちが、そばにいてくれているような気がした。太陽の日射しを浴びられないことが、唯一の不満だったが、それさえも絨毯の上で、女性と遊んでいる間は忘れた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 12:49| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする