2018年11月13日

ぼくがダライラマ?(60)

 そのまま出て行こうとした。ぼくは苛立った。思わせぶりの言い方が、当てこすりのように思えてしまったからだ。自分の娘を傷物にされて、黙っている父親があるだろうか。
「ぼくが娘さんに好意を抱いてるのを知りながら、何もなかったこととして嫁に出すわけですか」
「猊下の好意を受けたということは、娘にとって光栄の至りと申すべきことであり……」
「あなたは分かってるくせに、問い詰めようとしない。ぼくは龍王殿の中で密会してたんです」
「密会?」
「密会だけじゃない。結ばれたんです」
 にわかに摂政の顔色が変わった。青ざめていた顔が急に赤くなり、力なく垂れていた手も微かに震えている。ぼくは摂政にしてやられたと思った。言わなくてもいいことを、自分から白状させられたんだ。
「やはり、そういうことだったんだな。猊下が平民だったら、斬り捨ててやるところだ!」
 摂政はこちらの肩をつかんだ。激しく揺さぶられ、押し倒されそうになった。
「猊下は罪を背負って生きていかなくてはならない。娘のお腹に出来たのは、不義の子ということだ。相手の貴族もそれを知らない。娘が苦しむ分、その業に猊下も苛まれ続けるのです」(つづく)


 
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:13| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする